第8回  告白


「お早う、ヒロ」
薄暗い室内に、モニカの声が響いた。

ベット縁に腰をかけて広瀬の顔を覗き込んでいる。
寝ぼけ眼で見上げると、モニカがすかさず朝のキスをした。

「お寝坊さんなのね」
「うーん、おはよう」

広瀬は笑みを浮かべて、彼女に手を伸ばしたが、軽くあしらわれてしまった。

「ふふっ、だめよ。朝食が出来たから、早くね」
「昨日の夜は、、、」

声をかける間もなく、部屋から出ていってしまった。
ヒーターで程よく暖められた室内には彼女の香水の匂いがかすかに残った。

見渡すと昨日の夜に脱ぎ散らかしたはずの服はきれいに片付けられていた。
クローゼットから着る物を取り出し、着替えた後、二階奥の洗面スペースで歯を磨く。

ブラシをくわえ、鏡を見ながら

「このままでは少しまずいよな。彼女にどう対応していいものか、、、」

その彼女とは、、、。少し憂鬱な気分になっていた。

フェイスタオルで顔を拭って、気分を切り替えて陛下に降りる。

食卓には香ばしい香りが漂っており、広瀬の食欲を掻き立てた。

モニカは奥でサイフォンを使ってコーヒーを起てていた。
ゼナはバスケットから溢れるようなパンをテーブルに持ってこようとしていた。

「お早う、ヒロ。良く眠れたのかしら?」

意味ありげな言葉を投げかけられ、広瀬はドキッとした。

「さあ、沢山召し上がれ」

彼の後ろに回ってバスケットを置こうとしながら、
その豊満な胸をぎゅーっと押し付けてくる。
薄手のささささシャツを通して、柔らかい感覚が昨日の夜を思い起こさせる。

「モニカに気付かれる!」余りの大胆さに冷や汗がでる。

はす向かいに座ったゼナはたっぷりとスクランブルエッグを広瀬に取り分けてくれた。
その眼は昨日にも増して、親密な輝きをたたえていた。

フォークを持った彼女の左手、その小指でそっとテーブルに置いた広瀬の右手の甲を撫でる。
体の影になってモニカからは見えないのをいい事に、、、

こわばった笑みを浮かべる広瀬。

「さあ、できたてのコーヒーよ。それじゃ頂きましょう」

モニカはそのポットを中央に置いて、皆で朝食を食べる。

「今日はどうするの?」サラダを取りながら、モニカが尋ねる。
「どうって、ミュンヘンを案内してくれるんじゃないのかい」
「今日はまだ、、、その事でお話があるの」

「あら! お塩がないわね、ちょっと買ってくるわ」
そう言ってゼナはナプキンを椅子に残して、出て行った。

「ふふ、気を効かせる事もないのに。ママったら」
「そうなの? ちょっと緊張するね、話って」

節目がちにモニカが言った。
「実は私には、、、」
© 渡辺 田中 24
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