第31回  緊急と避難

			

「トゥルルルルー」携帯が鳴った。

慶子が来たか。半ば諦めと煩わしさが混じった気持ちで広瀬は携帯を眺めた。
ローテーブルから取り上げる。

「? 母さん?」それは予想もしなかった平塚の母からだった。
「どうしたの」

「父さんが、倒れたのよ!」
「倒れたって、、容態はどうなの!?」

「危ない様なの、とにかくすぐ帰ってきて!」
「わ、わかったよ」

動揺しているのであろう、声が震えているのが分った。
「光治は? 病院?」弟である。
「そう。救急車で一緒に病院よ。私は親戚や会社関係の対応もしなきゃならないし。もう大変だわ」

日本に帰るとしても、こちらもまず連絡しなくては。
上司の野村だな。後は、慶子か。

緊急度からしたら慶子だな。母との会話が終ってすぐに彼女の携帯へ。
今どこに居るのだろう、繋がらない。

とくかく、急ごう。まさに着の身着のままで部屋を後にして空港に向かう。
大通りでタクシーを捕まえる。

ベンツは軽快に夜の道を疾走する。
困った時の友達頼み。携帯を取り出し連絡をする。

「ハロー、ロビン。僕だ、ヒロセだ」
「おー、カツヤか。どうしたんだい」

「悪いね、寛いでいる時間に。実は、、、」
「それは大変だ。よし、わかった。カウンターの方には連絡しておくよ。コネクティングも極力、時間の無駄がない様にさせるから」

丁寧に礼を言って、携帯を切った。後は慶子だ。
このままだと、逃げたとも思われかねない。

「逃げた、、」その言葉に思わず吹き出しそうになった。
追う女、逃げる男か。よくある愁歎場だ。携帯はまだ繋がらない。

「ヤパニッシュ?」空港に到着してドライバーがゲート聞いてくる。
ルフトハンザを指示してそこで止った。

「ダンケシェーン」チップを渡すと、満面の笑みを返してくる。
タクシーは水銀灯を所々車体に照りかえしながら、すぐに夜の闇に消えていった。

カウンターではロビンからの連絡で滞りなくチェックイン。
搭乗を待つ間も何度となく連絡を取ろうとするも、だめだ。

いよいよボーディングだ。席に座るとすぐに思い出して様に金田と連絡を取る事を思い付いた。

後の事は任せたと、、、。
© 渡辺 田中 24
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