第一回 慶子




「ばかやろう!、緊張感が足りねぇんだよ!」
デスク前に立った広瀬に主任の野村が怒鳴った。
「いいか、ここはなぁ、、」野村が指差す機能仕様書に「はぁ」と答え
広瀬はすぐに目の前の椅子に座りながら、書類に目を凝らした。

修正箇所がハッキリと分かるまでお互いが延々と話し続ける。
お互いが納得したところで顔をあげると、周りの同僚は既に退社しているようだ。
各々のデスクはパーティションで区切られているので、一目で見渡すわけにはいかない。
時間もとっくに業務終了時間を過ぎていた。

「ふぅー、今日はこのくらいにしとくか、な、広瀬」
にこっと笑うとその鬼瓦のような顔も破顔一笑、なかなか愛嬌がある。
怒鳴るのも最初の頃は怖かったが今では慣れた。そもそも怒っているわけではなく
声が大きいだけだよ、と照れながら話していた。

「もう皆帰っちゃいましたし、ちょっと寄って行きますか」
野村はうんうんと嬉しそうな顔をして、サイドデスクの引き出しからブリーフケースを取り出し
帰り支度を始めた。

オフィスの外に出ると、外は真っ暗だがまだ六時。乾いた空気と頭がツンとするような寒さだ。
「髪の毛が無かったら、もっと寒いよな」
「野村さんの歳なら関係ないでしょうけど、俺はまだ若いんですから、洒落になりませんよ」

「がはは」野村は笑い声を響かせながら、早足でフリードリッヒ通りを目指す。
行き交う人達は観光客や家族連れが夜の散策を楽しんでいるようで、皆楽しそうだ。

しばらく行くと赤提灯が見え、おいでおいでをしているように思えるのは酒飲みの習性だろうか。
暖簾をくぐると「いらっしゃい!」と威勢のいい声が掛かる。青い目に金髪の板前が忙しそうに
カウンターを片付けている。

奥の座敷きに腰を据えるとおしぼりと突き出しがすぐに出てくる。
「じゃ、とりあえずビール二つね」「はいよ!」流暢な日本語で板前が答え、
奥の厨房にドイツ語で何やら叫ぶ。

「いやー、ベルリンに居酒屋があるとは思わなかったよ」差し出されたおしぼりで顔と
首筋を拭いながら野村が言う。

「昔ならいざ知らず、今は世界中どこにでもありますよ、それじゃ、お疲れ様でした!」

乾杯をしてジョッキを飲み干す。

「腹が減っているところに飲むビールは効くなぁ」箸でつまみをつつきながら満足げな表情だ。

広瀬は総合家電メーカーの携帯電話部門でシステム開発を担当している。
今回ドイツの企業と共同開発する事になり、その最終調整の為ここベルリンに出張することになった。
出張とはいえ長期一年なので、駐在員の入る同じアパートに部屋を借りて住んでいる。
工程の遅れを取り戻すために野村がベルリン入りしたのは、広瀬の半年後だった。

「飯はどうしてるんだ?」ふろふき大根を頬張りながら御満悦な表情だ。
「朝はともかく、夜は外食ですよ、野村さんは奥さんの手料理が恋しいんじゃないですか」

野村は、バカ言うなよ、とでもいうように、手を振ってみせた。

「お嬢さん、幾つでしたっけ」「もう七つだよ」今度は少し寂し気だ。
「これこれ」催促したわけでもないのに、手帖に挟んだ娘の写真を見せる。
「それ、この前も見ましたよ」

悪びれる様子もなく、

「すまんすまん」

胸のポケットしまう野村。仕事場とは違うその親バカぶりを微笑ましく思った。

「いいですねぇ、ホテル暮しは」
「まあ、こっちは三ヶ月だしな、ただ掃除は毎日やるだろ、おばさんが。
だから休みの日にだらだら寝ているわけにはいかねぇんだ」
「はは、部屋が汚れちゃたまりませんものね。それても歩合給だから是が非でもやるのかな」

あちこちで日本語が聞こえる店の中はとてもヨーロッパとは思えない。日本人の憩いの場となっていた。

「じゃ、また明日な」

手をあげてホテルに帰る野村をお辞儀で見送る。
ここでするお辞儀はすこし奇異な気もするな、でも握手で別れるのも変だ
そんな事を思いながら、野村とは反対方向に歩いていく。

寒そうに、でも楽し気に肩寄せあって道行くカップルを見るとふと慶子を思い出してしまった。
友人の彼女の友達として紹介された女だった。看護師として相模原に勤務、そこで姉と二人暮らしだ。

出会った時から妙にそそる女であった。
デートしていても下半身が反応してしまって困った事が数え切れない。
その事を友達に話すと「バカじゃないの、お前も溜まってんな」と相手にもしてもらえない。
どちらかといえば清楚な感じで着痩せするタイプ。全く想像できないらしい。
慶子の波長が広瀬のアンテナに何かを発信していた。

少々痩せぎすでその眼光の鋭さは技術者というよりはあの業界の人?との第一印象を持たれる広瀬。
「どうして付き合ってくれたの?」

ある時ベットの中で聞いてみた。

「なんで俺なの?」「顔が好みなのよ、それとココね」

ニコッと笑ってぎゅっとあそこを握ってくる。

「カターイ、まだできるでしょ」

シーツをとっぱらい、全裸の体をお互いにさらしながら、慶子の頭は広瀬の下半身に近付いて行く。
やや肩に掛かる長さの髪の毛をかきあげる。
自分の顔を広瀬によく見えるようにして舌で丁寧に一度目の残滓を舐めとっていく。

広瀬は手を伸ばすして慶子のまっしろな尻を撫で、指で陰部をまさぐる。
もう既に新鮮な愛液が滴っていた。

感じてるらしく、鼻息も荒くなりその舌先にも一層力がはいる。今度は口で激しく出し入れを繰り返す。
ちらっとこちらを見て「ふふっ」と微笑みながらのフェラチオは堪らない。

指では満足できなくなったのか慶子はその尻を広瀬の顔におしつけてきた。

「私のも舐めて!」

陰毛が少ないその部分を指で広げると、綺麗なピンク色であった。
広瀬は舌を突き出し、クリトリスをしゃぶりあげる。
その快感に慶子は陰部を更に押し付けてくる。滴り落ちる愛液で広瀬の顔はびしょ濡れである。
更に舌を丸めて、陰部へ出し入れする。チュパチュパとその音が静かな部屋に響き渡る。

「あぁ、もうだめぇ!」

耐え切れなくなった慶子は体を反転させ、広瀬の物を握ってその陰部に導いていく。

「いいわよ! 突き上げて!」

慶子は腰を激しく振りながら、揉みしだけ、と言わんばかりに広瀬の手を自分の胸に引き寄せる。

「ああん、ああん、もっと!」

きつく目をつぶり一新に快感を追い求めるそのどん欲な姿に、広瀬の物もより硬度が増してきた。

体勢を入れ替え今度は広瀬が上になる。慶子は快感に眉間に皺をよせて、自分の太ももの後ろに手を入れ大きく股を開き、広瀬の堅い物を迎え入れた。

「はぅん!、いいわ! もっと突いて!」

広瀬の汗が慶子の巨乳を濡らしている。
延々と続くそのストロークを受け入れる陰部から流れる愛液はシーツをドロトロにしていた。

「いくっ、いくいくぅ!」

慶子は広瀬の肩に爪をたてて、強烈な締め付けを感じさせながら達した。
同時に広瀬も一気に腰を振ってその熱い陰部に自分の物を流し込んでいった。

慶子の肩口に顔を押し付けて広瀬は荒い息を整えた。
その柔らかい大きな胸の感触を感じながらしばらくは動けなかった。
慶子もジッとして動かなず。ちらっと横顔を見るとそのトロンとした目つきが快感の大きさを物語る。

「ふー、汗だくだよ」

何となく照れてそう言うと、コクリとうなずく顔がかわいらしい。

友人の話では、彼女は父親を早くに亡くしていて、その面影が広瀬に似ていたらしい。

こちらに来てからはメールで話すくらいしか出来ない。一日に二、三回送ってくるのだが、
こちらが忙しくて返事もろくに送れない。

「あーあ、逢いたいな-」半年前の想い出に浸っていたら、クーダム通りの角にやって来ていた。

そこにはアンナが立っていた。
© 渡辺 田中 24
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